【3月21日】日泰寺の「弘法の日」と揚輝荘(南園)見学記

名古屋・愛知観光

3月21日、春の暖かな日差しに誘われて、名古屋の歴史と活気が交差する街、覚王山へと足を運びました。

今回の目的は、月に一度の「日泰寺の縁日」と、歴史的建築物として名高い「揚輝荘(ようきそう)」の散策です。地下鉄名古屋駅から覚王山駅までは片道240円、往復で480円という気軽な距離にありながら、一歩足を踏み入れると、日常を忘れるような特別な空間が広がっていました。

活気あふれる「弘法の日」の縁日

覚王山駅に降り立つと、そこにはいつもと違う熱気が満ちていました。毎月21日は「弘法の日」。この日は、駅から日泰寺へと続く参道が歩行者天国となり、数え切れないほどの出店が並びます。

参道を歩くと、新鮮な野菜や果物、そして全国各地から集まった海産物、さらには服飾品や仏具に至るまで、驚くほど多種多様な品々が並んでいます。よく見かける神社の縁日とは一味違い、信州や近畿など遠方からの出店もあり、物産展のような面白さがあります。

この縁日は、別名「名古屋版・おばあちゃんの原宿」とも呼ばれ、多くの年配の方々で賑わっています。あちこちで「元気だった?」「また来月ね」という明るい会話が交わされており、単なる買い物の場を超えた、人々の大切な交流の場であることを強く感じさせます。

ちょうどお昼時、香ばしいソースの匂いに惹かれて「広島風お好み焼き(600円)」をいただくことにしました。屋台には冷えたビールや熱燗もありましたが、この日は3月とは思えない暖かさ。私は炭酸が苦手なこともあり、お酒はあきらめて持参のお茶とともに軽めのランチを楽しみました。外で食べる出来立てのお好み焼きは、格別の味わいです。

日本とタイの絆を見守る「覚王山 日泰寺」

参道の先にそびえるのが、覚王山 日泰寺(かくおうざん にったいじ)です。このお寺には、他の寺院にはない非常にユニークな歴史があります。

日泰寺は、明治時代にインドで発見されたお釈迦様の御真骨(釈尊御真骨)「超宗派」、つまりどの宗派にも属さない全仏教徒のためのお寺なのです。

縁日の日、人々は本堂へのお参りだけでなく、日泰寺の周辺にある小さな祠や小屋を巡る「プチ八十八か所巡り」を楽しんでいます。これは四国八十八か所巡りの代わりになるとされており、お地蔵様にお賽銭を供えて熱心に祈る人々の姿が印象的でした。

昭和初期の国際交流の舞台「揚輝荘」

お腹を満たし、日泰寺を参拝した後は、徒歩数分の場所にある「揚輝荘(ようきそう)」へ。

揚輝荘は、松坂屋の初代社長である伊藤次郎左衛門祐民氏によって、大正から昭和初期にかけて築かれた広大な別荘です。かつては1万坪もの敷地に30数棟の建物が並び、政財界人や文化人、さらには留学生たちが集う、国際的な交流の拠点となっていました。

現在は南園と北園に分かれて公開されていますが、今回は入館料300円を支払い、南園を見学しました。

南園のシンボルである「聴松閣(ちょうしょうかく)」は、地上3階、地下1階の迎賓館です。

地階:仏教への敬虔な想いが形となった「旧舞踏場」

聴松閣の地階に一歩足を踏み入れると、そこには地上とは全く異なるインド様式の異空間が広がっています。 特筆すべきは、かつて舞踏場として使われていた広間です。ここには暖炉もあり、そカンボジアのアンコール・トムの彫刻を模したとされる女神像が鎮座しています。

これは、熱心な仏教徒でもあった祐民氏が自ら行った仏跡巡拝旅行での深い感動を、そのまま建築に反映させたものと言われています。当時のエリート層が単に西洋文化を追うだけでなく、アジアの精神文化に深く傾倒し、それを自らの美意識に取り入れていた証拠でもあります。この神秘的な女神像が、かつての華やかな社交の場を静かに見守っていたのです。

通路壁面に繊細なレリーフが施されたインド様式の広間があり、まるで異国に迷い込んだかのような錯覚を覚えます。さらに、そこから繋がる「地下トンネル」は見ごたえ十分です。このトンネルはかつて各建物を結んでいたもので、当時の建築技術の高さと、祐民氏の遊び心やこだわりが垣間見えます。

暖炉が物語る、洋風建築へのこだわりと格式

建物の随所に見られる暖炉も、聴松閣の大きな見どころです。地階の重厚な空間だけでなく、2階の居室などにも設置されており、当時の最高級の建築技術と意匠が凝らされています。 暖炉は単なる暖房器具ではなく、賓客をもてなす迎賓館としての格式を示す重要な装飾でもありました。揺らぐ炎を囲みながら、世界各国の賓客たちが語り合った光景が目に浮かぶようです。

名古屋市指定有形文化財としての価値

揚輝荘には、聴松閣を含めて5つの建造物が名古屋市の指定有形文化財に指定されています。かつては1万坪もの広大な敷地を誇ったこの場所は、今もなお、祐民氏が描いた「国際親善」と「文化交流」の夢を私たちに伝えてくれます。

地階のインド様式、そしてそこから続く神秘的なトンネルの先には、当時の日本が世界に向けて開いていた窓があったのかもしれません。

散策を終えて:覚王山の多面的な魅力と旅費

覚王山という街は、日泰寺のような厳かな歴史、縁日の活気あふれる下町情緒、そして揚輝荘のような華やかな国際交流の足跡が共存する、非常に多面的な魅力を持っています。

今回の散策で、ただの観光地ではない、人々の暮らしと歴史が息づく街の温かさに触れることができました。また違う季節の21日に、今度は北園の散策も兼ねて、再び訪れてみたいと思います。

今回の旅の費用:

・交通費(地下鉄往復):480円
・ランチ(広島風お好み焼き):600円
・陽輝荘 入館料:300円
 合計:1,380円

日常のすぐそばにある非日常を味わう、心豊かな一日となりました。

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